本研究成果のポイント エプスタイン・バーウイルス(EBV)というウイルスに感染した免疫細胞が、がん細胞に対する免疫効果を高め、がん発症を抑制することを発見しました。
2025.06.04
2025年2月25日
要約: エプスタイン・バーウイルス(EBV)に感染したB細胞は、自身の増殖とがん化を抑制するT細胞仲介型免疫監視を効果的に誘導する。しかし、EBV特異的T細胞がEBV非感染の一般的な腫瘍の監視に関与しているかどうかは不明である。本研究では、胚中心B細胞にEBVの抗原であるLMP1およびLMP2Aを発現させることで免疫監視を誘導し、非B細胞性腫瘍の形成に与える影響を調べた。これらマウスでは、放射線誘発性のT細胞急性リンパ性白血病/リンパ腫(T-ALL)の発症率が有意に低下し、対照マウスと比較して寿命が延長した。またCD4+およびCD8+ αβT細胞において活性化された記憶T細胞の数が有意に多く、腫瘍細胞の排除に関与していることが示唆された。それら腫瘍細胞ではMHCクラスI発現が顕著な低下を示すにもかかわらず、活性化CD8+ T細胞によって効果的に殺傷された。トランスクリプトーム解析の結果、T細胞におけるNKG2D-NKG2DL経路の亢進が確認され、LMP1/2Aによって誘導されたT細胞が一般的な腫瘍特異的抗原を認識する能力が増強されていた。また、T細胞性腫瘍だけでなく、ApcMin変異によって引き起こされる消化器がんもLMP1/2A誘導免疫監視によって有意に抑制された。これらの結果は、EBV感染に関連するLMP1/2Aの発現が広範な腫瘍監視に寄与しており、ヒトにおけるEBV感染の有益な側面を示唆するとともに、がん予防に関する重要な知見を提供するものである。
プレスリリースで解説しています。