教授挨拶
2019年8月より、広島大学大学院医系科学研究科 免疫学講座の教授を担当させて頂いております。 1968年開講の当研究室はこれまで本学の免疫学ならびに寄生虫学の研究と教育に貢献し、辻守康教授、山下優毅教授、菅野雅元教授の後を受け私で四代目となります。
私は学部生の頃、細胞老化や不死化という現象が分子レベルで制御されている事に興味を持った事がきっかけで医学研究の道に進みました。 それから癌遺伝子研究を牽引する東京大学医科学研究所の山本雅先生の研究室に入り、癌抑制遺伝子産物による細胞内シグナル制御の研究で博士号を取得しました。 研究テーマだった遺伝子がリンパ球抗原受容体シグナル制御に重要だった縁で免疫シグナル研究をされていた黒崎知博先生にご指導頂くようになり、抗体をつくるB細胞の発生分化が抗原受容体シグナルによって制御される仕組みについて明らかにすることができました。 2008年からB細胞研究の世界的権威であるKlaus Rajewsky先生の研究室に加わり、2017年までボストンとベルリンでB細胞分化やB細胞リンパ腫の研究に従事しました。
日米独のトップラボを経験する中で、1) 若い研究者の育成における指導者の責任、2) 本心から面白いと思う研究テーマに取り組む事の重要性、3) 色々なタイプの仲間と協力して研究を進める事の重要性、そして4) 他人の意見に惑わされず自分の信念を貫く事の重要性を感じました。 学生や後進の育成においてはこれらを意識し、サイエンスの厳しさと楽しさの両方を肌で感じてもらい、真に価値ある研究成果を発信できるよう努めて参ります。
免疫系は高等生物において独自進化した極めてユニークかつ合理的な生命システムです。 無数の微生物やウイルスに対抗する宿主生体防御として億単位の年数をかけて確立されただけあってそのシステムは複雑多岐に渡り、今日においても尚新しい発見が続くアクティブな研究分野です。 感染防御のみならず想像以上に多彩な機能を持ち、様々な疾患や生理現象とも関係することから医療や生命科学研究における重要性が益々高まっています。 基礎研究から臨床へとトランスレーショナルな研究を目指し、広島大学が当該分野における存在感を発揮できるよう研究と教育の両面において全身全霊取り組んで参ります。
広島大学大学院医系科学研究科免疫学 教授
保田 朋波流
【学歴】
1992年3月 | 広島城北高等学校 卒業 |
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1996年3月 | 九州大学農学部 卒業 |
1998年3月 | 九州大学大学院農学研究科 修士課程 修了 |
2001年4月 | 東京大学大学院医学系研究科 博士課程 退学 |
2003年10月 | 東京大学大学院医学系研究科 博士(医学) 取得 |
【職歴】
2000年7月 | 日本学術振興会 特別研究員 |
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2001年5月 | 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 助教 |
2005年4月 | 理化学研究所 免疫アレルギー科学総合研究センター 研究員 |
2008年12月 | Immune Disease Institute, Harvard Medical School 研究員 |
2009年4月 | 日本学術振興会 海外特別研究員 |
2011年8月 | Max Delbrück Center for Molecular Medicine 上級研究員 |
2017年2月 | 国立長寿医療研究センター 流動研究員 |
2017年4月 | 九州大学 生体防御医学研究所 准教授 |
2019年8月 | 広島大学大学院医系科学研究科 免疫学 教授 |
現在に至る